SUSTAINABILITY

私たちイーオクトが考える「サスティナビリティ」とは、難しいことではなく、
誰もがただほんの少し、日々の暮らしを、消費行動を見直して、行動を変えること、進化すること。

KLIPPAN 新作開発ものがたり
2020.04.10

一の巻:髙橋 百合子(イーオクト株式会社 代表)~唯一無二のブランケット開発のきっかけとは~

日本の酷暑

夏は夜。
月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし。
雨など降るもをかし。

 【現代語訳】
夏は夜(がよい)。
月が出ている夜は言うまでもなく、(月が出ていない)闇夜もまた、蛍が多く飛び交っている(さまがよい)。
また、(沢山飛び交っているのではなく)ほんの一匹、二匹がぼんやりと光って飛んでいるのも趣がある。
雨が降るのも、風情がある。

 

清少納言の「枕草子」で綴られている「夏の夜」。
ある夜は月を眺め、またある夜は幻想的な蛍の光に風情を感じ、時には雨音に耳を傾けながら暑い夏を過ごす。
清少納言だけでなく、おそらく当時の日本人もそのように感じていたことでしょう。

ところが現代において、わたしたち人間は多くのCO2を排出し、地球温暖化の汚染物質を大気中に放出し続けています。

世界中の平均気温の上昇はとどまることを知らず、日本ではこのままのペースで温暖化が続けば今世紀中に今よりも気温が5.4度上昇すると予測されています。2018年には観測史上最高気温である41.4(埼玉県熊谷市)が記録され、2019年は熱中症で7万人以上もの人が病院に搬送される事態が起きています。

日本の夏寝具を変える!

イーオクト代表の髙橋百合子は“気候危機”という深刻で巨大な問題と対峙していました。

髙橋:
「かつての日本はエアコンを使わなくても夏の夜を過ごすことができ、エアコンの普及率は1970年でも10%以下でした。ですが今の日本は気候が一変して亜熱帯に。2019年の2人以上世帯の普及率は90.6%です。住宅の気密性や断熱性、都市のヒートアイランド化もあり、日本の夏の夜は命に係わる危険な状況になってしまい、高齢者の救急搬送率や死亡率も高くなっています。
例えば1960年と2019年の7-10月の気温を比較してみても一目瞭然です。特に10月の気温の上昇が顕著で、30℃を超える日があります。つまり、夏の期間が長くなってきているのです。」

1960年7平均気温25.8最高平均気温29.8最高気温33.7
      826.430.434.7
      923.6℃27.8℃32.7℃
      1016.8℃21.1℃27.9℃
2019年8月28.4℃32.8℃35.6℃
      925.1℃29.4℃36.2℃
      1019.4℃23.3℃30.3℃

 

この状況を何とかしなければいけない。
夏の夜の寝苦しさから解放されて快適に過ごせるようにしたい。
スッキリと目覚められるような上質な睡眠がとれ、心が豊かになれる素材とデザインで寝具をつくりたい。
そこで髙橋は日本の夏寝具を変えるべく立ち上がりました。

 

夏の寝室環境を調べ尽くして見えてきたこと

日本の夏の夜に合った寝具をつくる。
そう決めた髙橋が市場のリサーチを続けていくうちに、あることに気づきます。

髙橋:
「深刻な状況と向き合って見えてきたのは、夏の寝室環境に対する、機能もデザインも優れた肌掛けが市場にないということ。イーオクトが日本総輸入元になっている「KLIPPAN」と「エングモデューン」で秋から春までの寝具はきちんと提案できるのですが、夏寝具については長い間探し続けていました。また、イーオクトの直営店「ecomfortHouse」にいらしたお客様調査では、半分以上の方がタオルケットを使っていました。
1960年代から始まったと思われるタオルケットは当時の気候や自然の風通しがよかった家の環境には合っていましたが、現在の亜熱帯と化した日本の状況には合ってないと感じていました。
そもそも、日本には寝室というものがなく、お布団を敷けばそこが寝室、たためば居間。
寝具は家族だけ、または自分だけが使うものなので、他人に見せることを意識していませんでした。
ですからベッドのある西洋の寝室インテリア文化が、日本には育たなかったのです。
一方、キッチンやリビングルームはお客さまを迎えて人目に触れる場所なので、日本のインテリアデザインはここが中心になってオシャレになっていきました。
現代の日本では6割以上の所帯がベッドを使用する時代となり、ベッドが寝室を占めるスペースは大きいのですが、相変わらず寝室インテリア、特に夏の寝室は後回しになっています。」

 

世界初の新素材

タオルケットに替わる、日本の風土に合った素材とデザインの夏寝具を研究する一方で、髙橋の中である考えが浮かびます。

髙橋:
「家のバスタオルは長くリネンを使っていて、吸水性・吸湿性のよさを実感していました。さらっとしていて肌にまとわりつかず速乾性もあります。ただ、寝具にはある程度の重さがないと感覚的に安心できません。それなのに市場にある寝具としてのリネンのブランケットは薄手のものばかり。そこでKLIPPANのブランケットやぬいぐるみに使用しているオーガニックのシュニールコットンと、リネンを掛け合わせたらどうだろう、これはぜったいに確かめたいと思いました。
そこでKLIPPANからリネンとシュニールコットンで織ったサンプルを取り寄せたところ、これが抜群によかった。
シャリっとしたリネンと、ふわっとしたシュニールコットンの質感は日本の夏寝具にドンピシャだと確信しました。」

 

最高のデザインと出逢い、化学変化を楽しむ

夏寝具の素材を確信した髙橋が次に考えたのは、日本の風土に合った素晴らしいデザイン。
国内外のあらゆるデザイナーを探し続けるうちに意外な発見がありました。

髙橋:
「どんなインテリア環境の人にも心地よさと快適さを享受してほしい、洋室にも和室の布団文化にもピッタリのデザインは何か、と考え、スウェーデンのデザイナー、日本のデザイナー・・・長く長く探し続けました。
シュニールコットンとリネン素材の2つの組み合わせが生きるデザイン、素材感も表現できる、という視点で考えた時に、日本の伝統的な型染に辿り着きました。技法としてのオリジナリティはもちろんですが、そのデザインには独特の世界観があり、ユニークでありながら、日本風土になじんできた歴史があります。
そのデザインをスウェーデンのKLIPPANと結び付けたいと考えました。
そして偶然、型染作家の小野豊一さんの「吾亦紅」の作品をと出逢い、その瞬間に「これだ!」と感じました。
「無量花」は小野さんが考えた架空の花ですが、和のヴェールをまといつつスウェーデンの洋のテイストも感じられます。日本人は、そこで生まれ育ったり暮らしたりしたことがなくても、里山や野の花、あぜ道、囲炉裏のはぜる火など、日本の原風景を共有することができます。あのノスタルジックな感覚が小野さんの2つのデザインにはあるのです。
小野さんのデザインがどんな化学反応を起こすか、きっとリネンとシュニールコットンにピタリとはまるだろうと、期待と同時に ワクワクの楽しみを持ちました。
色に関しては、素材本来の色「無染色」は必ずやりたいと思い、あと1色は日本独特の音階のように風土になじむ色、ということを考えました。

 

唯一無二のブランケット、完成

髙橋:
「このブランケットの素晴らしいところは、なんと言ってもリネンとシュニールコットンという天然の異素材の組み合わせに、日本古来の型染のデザインを掛け合わせたところです。
シュニールコットン素材は、KLIPPANのオリジナリティあふれる世界人気製品ですが、特に日本では一年間を通して寝具としてもソファカバーとしても評価が高い逸品です。
そして、両面でデザイン(柄)があると表面の素材の割合はリネンが多い、コットンが多い、と変わり、質感の変化と肌触りの変化をもたらします。
裏と表で色味も変われば、肌感も変わるのです。
シュニールコットンの肌触りはふわふわで、リネンの肌触りはシャリシャリ。
私の家の寝室は冬もサマーデュベにスローを掛けていますが、このスロー一枚でインテリアがきちんと整い、変わり、とても美しくなります。
今年の夏からはリネン&シュニールコットンブランケットで 心地よい夏を過ごします。
視界に入るものをいつもきれいに整えておく、そうすれば気持ちよさが増します。
この唯一無二のブランケットが新たな日本の夏の寝具として定着してほしいです。

写真:結城剛太 スタイリング:黒田美津子 special thanks to kotte&co. / Carl Hansen&Son Japan  / Louis Poulsen Japan / Living Motif
写真:結城剛太 スタイリング:黒田美津子
special thanks to kotte&co. / Carl Hansen&Son Japan / Louis Poulsen Japan / Living Motif

 

睡眠環境の向上がウエルビーイングにつながる

髙橋:
「現代の日本の夏の寝室環境には、ふさわしい素材があります。
睡眠はウエルビーイングの基本であり、室内空間のインテリアを整えることも、リラクゼーションには欠かすことができない要素です。
リネン&シュニールコットンブランケットは素材とデザインの素晴らしさがあり、長く使っていただけるので、日本の寝室環境を美しく整えながら、睡眠環境を向上させてほしいですね。そして、ひとりでも多くのみなさんに、このリネン&シュニールコットンブランケットを届けることができるよう願っています。」



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