SUSTAINABILITY

私たちイーオクトが考える「サスティナビリティ」とは、難しいことではなく、
誰もがただほんの少し、日々の暮らしを、消費行動を見直して、行動を変えること、進化すること。

COLUMN :第13回(2012.03.12)

第13回 ハンバーガーチェーンMAX(スウェーデン)のサクセスストーリー

スウェーデンの北極圏の町から発祥

MAXは、スウェーデンの北極圏にあるイェリバリという小さい町で1968年に創設されたハンバーガーチエーンです。全国に86店舗を持ち、従業員は約3000人、2011年の売上が約177億円というオーナー企業です。昨年、ノールウェーに進出をしましたが、スウェーデン市場が主で、マクドナルドのようなグローバル企業ではありません。

その小さなスウェーデンのハンバーガー・チェーンが、2007年から飛躍的にサスティナビリティ分野でリーダーシップをとるようになり、イギリスのBBCテレビ局やニューヨークタイムズやドイツのDie Spiegel誌などの大手メディアからも取材が殺到し、一躍、国際的なメディアの注目を浴びるようになったのです。今回は、そのサクセスストーリーをご紹介いたします。


10年連続顧客満足度トップのハンバーガーチェーンMAX
(写真提供: MAX)

 

ナチュラル・ステップと協働で、斬新な地球温暖化対策

MAXのハンバーガーは、注文を受けてから作るという手法で、質が高く、おいしいのでスウェーデンのハンバーガーチェーンの中で、10年連続で顧客満足度トップの座を占めています。しかし、MAXは、長年、知的障害者を積極的に雇用するなど、企業の社会的責任のうちの社会的側面で着実な対策をしていましたが、2006年まで、環境においてはさほど注目を浴びるような対策はしていませんでした。

 MAXが地球温暖化問題の取り組みにおいて、産業界でリーダーシップをとるようになった「きっかけ」は、2005年のニューオリンズを襲った巨大ハリケーン・カトリーナの事件と2006年の元アメリカ副大統領のアル・ゴアの書いた「不都合な真実」の本と映画、そして、スターン・レビュー「気候変動の経済学」でした。これらの出来事は、世界の多くの人々の意識を変えましたが、MAXの社長も、その感化を受けた一人だったのです。

 彼は、ハンバーガー・チェーンも地球温暖化対策に取り組む必要性を強く感じたのです。そこで、当時、人事部長だったペア・ラーシュハンソンが、サスティナビリティ部長に抜擢されました。彼は、環境に取り組むには、しっかりした戦略が必要だと考え、企業の環境戦略の立案や具体的な対策を支援している国際NGOナチュラル・ステップにアドバイスを求めました。それが、2006年の秋でした。そして、翌年2007年の5月に、驚くようなスピード感で、世界の産業界をリードする斬新な地球温暖化対策を打ち出したのです。

 

全メニューに二酸化炭素排出量を表示

MAXは、ナチュラル・ステップのアドバイスを受け、ハンバーガーの原料の生産から、運送、レストランでの調理、そして廃棄されるまでの全ライフサイクルでの環境負荷を分析しました。そして、地球温暖化の問題に関しては、専門のコンサル会社と協力して、MAXの全てのメニューにおける地球温暖化効果ガスの排出量(二酸化炭素に換算)を計算しました。その結果、驚くことに、牛肉の生産段階における負荷が、MAXの全温暖化効果ガス排出量の70%を占めるという結果になったのです。


全メニューにおける地球温暖化効果ガス排出量
(グラフ提供: MAX)

 

なぜ牛肉のハンバーガーが、魚や鶏肉やベジタリアンのハンバーガーより圧倒的に負荷が高いかというと、ビーフの原料の肉牛が反芻してげっぷをすると二酸化炭素より21倍も温暖化効果のあるメタンガスを出すからなのです。

MAXは、この調査の結果を踏まえて、サスティナビリティの対策の最初の取り組みとして地球温暖化対策にフォーカスすることを決めたのです。

 


全メニューの二酸化炭素排出量を表示(写真提供: MAX)

 

上記画像の緑の枠内に鶏肉、魚、ベジタリアンのハンバーガーメニューがあります。右にビーフのハンバーガーがあり、二酸化炭素に換算した排出量が1.8kgと表示されており、それに比べ、魚は0.5kgと低いのが分かります。また、緑の枠内に「カーボンオフセットしています」と大きく表示されています。
MAXの対策が、ユニークなのは、顧客を巻き込んだ対策であることです。

 

つまり、MAXの努力で地球温暖化の負荷の高い牛肉のハンバーガーを売らないという対策をするのではないのです。もし、そうしていたらMAXは倒産してしまったでしょう。そうではなく、顧客に全メニューの負荷を二酸化炭素の排出量を表示することで公開し、顧客に温暖化の負荷の少ないメニューを選んでもらうというシステムを構築したのです。そうすれば、顧客といっしょにステップ・バイ・ステップで、サスティナビリティに向かって歩むことができ経済的にも発展できる戦略をとったのです。

 また、省エネ対策やグリーン電力に切り替えるなどの対策をした後、全ライフサイクルの二酸化炭素排出量をカーボンオフセットすることにしました。カーボンオフセットという対策は、賛否両論の議論がありますが、MAXは行動することが重要と、信頼できるイギリスのNGOを介して、アフリカの貧困な村に村の収入源となる果樹を植林しています。その額は、年間約8000万円です。

 

サスティナビリティに取り組み経済発展

2007年は、コペンハーゲンでCOP15国連会議が開催さたので、地球温暖化問題への関心は国際的に非常に高い状況でした。それゆえ、2007年の春に発表したMAXのこの画期的な対策は国際的な脚光を浴びることになったのです。BBCがMAXのカーボンオフセットの対策を取材したり、元ビートルズの歌手、ポール・マッカートニーがEU議会で議員にスウェーデンのハンバーガー・チェーンは、二酸化炭素排出量を表示して顧客が選択できるようにしている、とハッパをかけたこともありました。


元ビートルズ ポール・マッカートニーのEU会議でのスピーチ
(画像提供: MAX)

MAXがグリーン電力を選択して、全店舗の電力を風力発電にしていることは昨年NHKの番組でも紹介されました。最近は、太陽光発電もとりいれています。

 MAXの地球温暖化対策以外の環境対策としては、森林伐採を防ぐためにパーム油を使わないことと、使用済の油はバイオイーゼル車両燃料にする、オーガニックのコーヒーを使う、魚は、MSC(持続可能な漁獲方法を認証したラベル)認証の魚を使う、有機農業からの原料調達を優先的に行う。ゴミを削減するために子ども向けメニューのボックスを廃止、バッテリーを使うおもちゃは配らない、などがあります。

また、サスティナビリティ部長の話では、最近、新しいタイプのORWAKの圧縮減容機を導入したとのことです。ある店舗では、ORWAKの圧縮減容機5030で、紙コップを圧縮してリサイクルしているとのことです。

 


ORWAK5030で紙コップなど圧縮してリサイクルへ
(写真提供: イーオクト)

 

ナチュラル・ステップの模範事例

ナチュラル・ステップが、MAXをサクセスストーリーと評価する理由は、彼らがナチュラル・ステップのバックキャステイングという戦略立案方法を使い、システム的にサスティナビリティの対策をとったからです。そして、これが、顧客と社会の信頼につながり、会社の経済発展に繋がったことを高く評価しています。MAXの温暖化への負荷が少ないメニューの売り上げは12%増えました。そして、ブランド価値がアップし、会社全体の売り上げが伸びたのです。2009年には、環境対策をして経済的に発展した企業が受賞するイギリスのグリーンキャピタリストという賞を受賞しています。MAXの社長はインタビューで、「一店舗を増やすより、サスティナビリティの取り組みの方が利益につながった」と語っていました。

 もう一つ高く評価していることがあります。それは、MAXが自らサスティナビリティに取り組むだけではなく、サプライヤーや顧客、そして、他業界の企業へもサスティナビリティに取り組むように啓発活動をしている点です。先日も、アメリカのラジオ番組でCSRについて語っていました。これらのことをトータルして、MAXが世界のサスティナビリティをリードする模範企業に成功したと評価しているのです。

 私は、2007年からすっかりMAXのファンになり、出張中にファーストフードを食べる場合は、MAXに行って地球温暖化の負荷が少なく、MSC認証ラベルのあるフィッシュバーガーを好んで食べています。それが、とってもおいしいのでお勧めです。

 更に詳しくは、MAXのホームページをご参照ください。

http://www.maxburgers.com/

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