SUSTAINABILITY

私たちイーオクトが考える「サスティナビリティ」とは、難しいことではなく、
誰もがただほんの少し、日々の暮らしを、消費行動を見直して、行動を変えること、進化すること。

COLUMN :第5回(2011.04.08)

第5回 「世界をリードするスウェーデンのエコホテル、ソンガ・セービー」
Sånga-Säby Kurs & Konferens AB

“世界一環境にやさしいホテル“のタイトルを取得したソンガ・セービーの環境対策

ソンガ・セービーの歴史(Sånga-Säby Kurs & Konferens AB)
Sånga-Säby Kurs & Konferens AB ソンガ・セービー・ホテル・コンファレンスセンター(以下、ソンガ・セービーと称す)は、ストックホルム中心街から車で45分の郊外、フェーリング島にあります。


ホテル・エントランス

この島はスウェーデンで3番目に大きいメラレン湖の湖畔に位置した、コンファレンスに適した静かで落ち着く環境です。
ソンガ・セービーの歴史は、スウェーデンの農民運動の台頭と繋がっています。
ソンガ・セービーは、初め農園でした。1929年に全国から農民が集まり、現在のスウェーデン農民連盟LRFが設立された歴史的な場所です。
1940年代に連盟が農園を買い取り、研修、講師の宿舎として使うようになりました。
1970年代には、研修とコンファレンス施設として発展し、1995年からは、LRFやその他の企業や組織対象のホテル・コンファレンスセンターとして創業しました。


湖畔から見た広い庭のあるホテル

 

なぜソンガ・セービーが世界一環境にやさしいホテルになったのか

1997年、ソンガ・セービーは、国際ホテル協会から世界一環境にやさしいホテルとして表彰されました。
今でこそ、ゴミ分別や省エネなど、ホテルにおける環境対策が当然のことになっていますが、当時、ホテルが環境対策をしていると宣伝すると、環境に配慮しているホテルは快適ではないというネガテイブなイメージが先行し、5%の客が減ったという時代でした。
そのようなスウェーデン社会の中で、なぜ当時の社長は環境に取り組んだのでしょうか。
それは、彼が環境と経済が密着していることを理解し、突発的な、一過性の対策ではなく、長期的、システム的かつ、しっかりした環境戦略を持って取り組んだからです。
90年代の大不況でホテルの倒産が続き、ソンガ・セービーも赤字に悩んでいましたが、社長の新しい考え方と環境戦略で数年で黒字に転換、それはサクセス・ストーリーとなっています。
時代を読み、先取りをしたことがその成功につながったと思います。

 

ナチュラル・ステップの持続可能な社会の原則を環境戦略の指針に

*現在のソンガ・セービーの環境ポリシー*
「全ての物理的資源を使う活動は、環境に影響を与えます。それゆえ、私たちは営業上、常に最善で最も省資源なものを使います。環境対策の基盤として、再生可能な資源を使い、循環を完結させ、環境を害する物質を避けます。環境配慮において、業界トップを維持する志です。」
当時は、「再生可能な資源や、循環を完結させる、環境を害する物質を避ける」という意味をもっと明確にするために、ナチュラル・ステップの持続可能な社会の「4つの原則」を環境目標に掲げました。

(1)地殻からの物質の濃度が増え続けることに加担しない
化石燃料、重金属を使わない
(2)自然に異質で難分解な化学物質を使わない 
(3)自然の循環を物理的に劣化しない
(4)資源は、効率よく、公平に使う

 

具体的な対策

(1)に関してですが、ソンガ・セービーは、すでに10年前に脱化石燃料をほぼ達成していました。
例えば、電力はその当時から自由化されていたので、企業や個人が選ぶことができました。ソンガ・セービーは、水力発電から電力を購入していました。
暖房は、すぐ側にある湖の底の水と、大気の温度差を使ってヒートポンプでホテル全体を暖めていました。今は、冷房も同じシステムを使っています。
トラックはバイオディーゼルで走り、公用車はエタノール車を使っていました。
サウナとプールのお湯は、ヒートポンプとソーラーコレクターを利用しています。


ソーラーパワーを温水に利用したサウナとプール施設

また、芝刈りには太陽光発電の自動芝刈り機を使用、ユニークだったので泊り客に大人気でした。
重金属についても、一例として、ホテルのソファはクロムでなめされていないものを選んでいました。
(2)に関しては、ホテルの清掃で使う洗剤、洗浄剤は全て、環境ラベルのあるものに切り替えています。ホテルのレセプションのフロアは、石なので水だけで洗浄するなど、有害な化学物質を避けています。

そして、客室のシャンプーや石鹸も、タオルやベッドリネンのクリーニングも、環境ラベル認証のある洗剤が使われています。
また、ホテルの増築をした時、建材にはFSC認証の物を使用、ペンキなども自然素材にして有害な物質を避けました。ベッドまで、環境ラベル認証のものにしています。

 


地形に合わせて増築された歪な形の宿泊施設
木材はFSC認証、ペンキも自然素材の物を使用

※FSCは、Forest Stewardship Council 森林管理協議会の略。木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関です。その認証は、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に与えられます。

 


ベッドも環境ラベル認証のものを使用

(3)に関しては、農産物の調達時にできるだけ地産でオーガニックなものを選んでいます。
(4)に関しては、ゴミを細かく素材分別してリサイクルに力を入れてきました。ゴミは23種の素材に分別、ゴミの33%は生ゴミで、それはコンポストをしています。

 


ゴミの素材分別が実施されているレストランのバックヤード

アメニテイーに関しては、シャンプーや石鹸の使い捨ては環境に取り組み始めた90年代から廃止しています。
ゴミ処理もリサイクルするために、90年代から圧縮減容機を導入し、分別・圧縮してトラックの運搬効率を上げ、コストとCO2削減を実現しています。
北欧で初めて北欧委員会の「スワン(環境ラベル)」を取得したホテル
ソンガ・セービーは、1999年に北欧最初のホテルとして、北欧委員会の環境ラベル「スワン」を取得しました。


スワン(白鳥)の形をした北欧委員会の環境ラベル

この基準は、世界的に最も厳しい基準だと言われています。基準には省エネから節水、そしてゴミのリサイクルなどがあります。
その当時、まだホテルの環境ラベルがなかったため、ソンガ・セービーの社長が自ら北欧委員会にホテルのようなサービスにも環境ラベルを作るようにと働きかけたのです。
さらに、基準作りにおいてもステークホルダーとして参加し、厳しい基準になるように貢献しました。

 

北欧で初めてスワンを取得したレストラン

ソンガ・セービーは、2006年、北欧で初めてレストランにおいてスワンの環境ラベルを取得しました。


オーガニック食材が並ぶメインダイニング

スワンの環境ラベルを取得するためには、サプライヤーとの対話があることが重要視されます。特に、商品群と輸送が重要視されます。また、エネルギーの効率的な使い方や、節水対策が基準となっています。

 

ソンガ・セービーでの会議はカーボンフリー

ソンガ・セービーが、近年、力を入れてマーケテイングしているのは、彼らの地球温暖化対策です。
2006年のアメリカ元副大統領のアル・ゴアの映画「不都合な真実」の後、スウェーデンでは国民の地球温暖化への不安と関心が高まりました。多くの環境先進企業がそれに応えてマーケテイングをしています。
ソンガ・セービーは、2007年に地球温暖化対策先進企業のネットワークに参加して、いろいろな対策やコミュニケーションをしています
その一つに、ホテル事業で出る二酸化炭素排出量を計算して削減対策をした後に、残った分をカーボンオフセットするという対策をしています。
そして、ソンガ・セービーで会議をするとカーボンフリー、つまり、二酸化炭素の排出量がゼロで地球温暖化に加担しませんと言うアピールをしています。
どういうことかというと、ソンガ・セービーは、宿泊客の一泊滞在における二酸化炭素の排出量を計算しています。宿泊客がホテルに車などで来る時の排出量も加算すると、1人一泊の負荷は0.45kgだそうです。
2010年には、インドでココナッツやピーナッツ栽培で出た有機廃棄物を燃料にしている発電所に投資をして、負荷の分量をオフセットしています。
つまりその電力で、化石燃料の代替をしています。このプロジェクトで、インドの地元の住民900人に雇用が生まれたとのことです。

 

まとめ

このようにソンガ・セービーは、90年代から常に業界に先駆けて環境対策を取ってきました。
それゆえ、スウェーデンにおいて環境にやさしいホテル・コンファレンスホールとして確固たる地位を維持しています。
今後、社会の環境意識は益々高まるでしょう。それにつれて彼らの存在価値も高まり、それが経済活性化にもつながっていくことでしょう。

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